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by benren

外国人研修・技能実習制度の法改正に対する意見書  

平成21年2月8日,研弁連は臨時総会を開き,下記の内容の意見書を採択しました。


内閣総理大臣 麻生 太郎 殿
法務大臣   森  英介 殿
外務大臣   中曽根弘文 殿
厚生労働大臣 舛添 要一 殿
経済産業大臣 二階 俊博 殿
国土交通大臣 金子 一義 殿



                    外国人研修生問題弁護士連絡会
                    共同代表 弁護士 小野寺信勝
                    共同代表 弁護士 指宿 昭一
                    事務局長 弁護士 大坂 恭子



第1 意見の趣旨
 当会は、外国人研修生制度、技能実習生制度について、以下の抜本的見直しを要求する。

1.研修生の実務研修に関し、労働関係諸法令の適用を法律により明示すること。

2.現行の団体監理型の受入れを禁止すること。

3.研修生に対し多額の保証金や管理費の徴収、賠償金の取り立てを行う本国送り出し機関からの受入れを禁止すること、これに伴い、いかなる契約を行う送り出し機関からの受入れを禁止するかを法律で明示すること。

4.研修生及び技能実習生に対し、指定された範囲内での職種の変更を認めるとともに、受入れ機関の都合により現在の受入れ機関での研修、技能実習が継続できない場合でも3年間の研修、技能実習を受ける機会を保障すること。


第2 声明の理由
1 外国人研修生・技能実習生制度の沿革
 日本における外国人研修生受け入れは1950年代後半に始まり、1989年の入管法の改正により在留資格に「研修」が設けられた後、1990年に研修生制度を改正、いわゆる「団体監理型」(中小企業団体等を通じて中小企業等が研修生受入れを行う形態)を導入し、受け入れの条件の緩和が行われた。
 また、1993年には、研修を終了し所定の要件を充足した研修生が技能実習生として雇用関係のもとで引き続き本邦に在留できることとなり、1997年には技能実習中の滞在期間が2年に延長(研修での滞在期間と合わせて最長3年)され、現在の制度となった。
 2007年における在留資格「研修」の新規入国者数は約10万2000人、技能実習への移行者は約5万4000人、技能実習中の者は10万人近くにも上り、合計20万人が国内で働くに至るなど、研修生・技能実習生の数は年々増加してきた(註1)。

2 研修・技能実習制度の趣旨
 外国人研修生制度は、「開発途上にある国々に対して技術・技能を移転させることを目的として、我が国に研修生を招いて技術移転による人材育成を行い、それらの国々の発展を支援するという長く広くその効果が浸透していく国際協力・国際貢献」(法務省入国管理局)であるとして制度化され、かかる制度趣旨から、研修内容は、単純な反復作業の研修でないこと、受入れ機関は、研修時間の3分の1以上の時間を日本語研修などの「非実務研修」(いわゆる座学研修)に当てることを原則とされた。
 技能実習制度も、研修制度の拡充の観点から研修を終了し所定の要件を充足した研修生に、雇用関係の下でより実践的な技術・技能等を修得させ、その技能等の諸外国への移転を図り、それぞれの国の経済発展を担う「人づくり」に一層協力することを目的として創設された。
 「研修」は出入国及び難民認定法(以下、「入管法」という。)で「本邦の公私の機関に受け入れられて行う技術・技能又は知識の習得をする活動」と定められている。研修生は、「技術を学ぶ者」とされるため、研修中は報酬を受ける活動が禁止されており、受領する給付は研修手当(生活実費)であるとされる。残業や休日労働はさせられないかわり、非労働者として労働関係諸法令の適用を受けないとされてきた。 研修・技能実習制度は、法令の他に多くの告示、通達等により規定され運用されているが、これらの諸規定は、研修生や技能実習生が入国・在留するための基準として定められているものであり、研修生受入れ機関の留意事項や不正行為については、法務省入国管理局による「研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針」を除くと直接の定めがなく、研修生保護のための立法はなされていない。また、受入れ機関に対する責任ある監督機関も定められていない。
 そのため、現実には、以下に述べるとおり、制度趣旨とあまりにも乖離した実態が存在する。


3 現状の問題点
(1) 研修生の労働実態
 研修生の多くが研修の実態はないまま「実務研修」と称して、長時間の労働をさせられている。以下、当連絡会所属の弁護士の携わった具体的事例を述べる。
■事例①:残業(熊本)
 2006年4月から6月に研修生として来日し、熊本県小国町にある第1次受入れ機関である事業協同組合を通じて、天草市の縫製会社に配属された中国人研修生・実習生らが、違法な労働条件のもとで就労させられていた事件。労働条件は1日12時間以上、休日も月1、2回程度しか与えられていなかった。また、給与は約月6万円、残業代は県の最低賃金の半分以下の時給300円しか支払われていなかった。さらに、旅券、通帳、印鑑を取り上げられ、賃金は強制的に貯金させられていた。
■事例②:残業(岐阜)
 2005年3月から7月に研修生として来日し、岐阜県揖斐郡大野町にある第1次受入れ機関である事業協同組合を通じて、岐阜市の縫製会社に配属された中国人研修生・実習生ら(女性4名)が、違法な労働条件のもとで就労させられていた事件。研修生であるにもかかわらず、時間外労働が強いられるどころかその残業時間は月200時間近いこともあった。にもかかわらず、研修生らは、残業代として県の最低賃金の半分以下の時給300円しか支払われていなかった。しかも、研修生らの研修手当は、月8万4000円で、協同組合がその中から管理費として3万9000円を控除するため、研修生が受け取れる研修手当は、結局、4万5000円であった。

 研修生に支払われる研修手当の平均額が2005年で月額6.6万円、月8万円未満が84.4%という実態(註2)に見られるとおり、仮に賃金とすれば最低賃金に達しない水準の給付しか得られないにもかかわらず、現実には、研修生は、技能実習生や他の日本人労働者と区別されることなく、時間外や休日労働をさせられている。研修生に時間外労働をさせた例は、平成19年度に入国管理局より「不正行為」と認定を受けた例だけでも98件(註3)にものぼる。法務省入国管理局の指針(註4)においても、研修生に月100時間を超える所定時間外(註5)労働を行わせていた企業や月130時間を超える残業をさせていた企業が不正行為と認定されている。
 このように、外国人研修生は、実態としては、単なる低賃金労働者として使われているにも拘わらず、労働関係諸法令の保護が全く与えられていないばかりか、明確な指導、監督機関もないまま放置されている現状がある。

(2)技能実習生に対する労働関係諸法令違反の横行
 また、本来、雇用契約の下に最低賃金法に従った賃金額、時間外手当が支払われるべき技能実習生についても、実際には、最低賃金法に従った賃金の支給がなされていない場合や、不当なピンハネがなされているケースが少なくない。
 例えば、先の岐阜の残業事例においては、技能実習生の賃金から、協同組合が管理費として4万2000円(2、3年目)を控除するため、技能実習生が受け取る賃金は、月4万8000円(2年目)、5万2000円(3年目)で、しかも、ここから月3万円が強制的に貯金させられ、この貯金は協同組合の管理下にあったため、実質的には研修生時代と変わらない待遇を受けていたのでる。しかも、残業代は、技能実習生に移行した後も最低賃金の半分以下の時給300円(2年目)、350円(3年目)しか支払われていなかった。 そして、2007年9月、彼女たちは、3年目の技能実習中に、突然、2日後に、中国へ帰国するように命じられた。既に帰国した技能実習生に対して、第2次受入れ機関が、違法に低額の残業代を支払っていたことが発覚し、名古屋入管から「不正行為」であると認定され、研修生・実習生の受け入れ機関としての適格性を失ったので、技能実習生全員を帰国させようとしたのである。

(3)人権侵害行為の多発
 受入れ機関における人権侵害行為も横行している。
■事例①:(愛知県豊田市)
 愛知県において、ベトナム人技能実習生6名が、未払賃金、残業代、人権侵害に基づく慰謝料を請求した事件。人権侵害の内容は、強制貯金、旅券や健康保険証の強制管理、トイレに行く度に徴収された罰金の制度、女性研修生の住居に夜中に受入れ機関の社長が潜り込む等のセクハラ行為、差別発言等悪質で深刻なものであった。
 また、受入れ機関による旅券の強制管理は、団体管理型で研修生を受け入れた多くの受入れ機関で行われており、その多くが研修生来日直後に預り証に署名を求めた上、帰国する時期まで管理するという内容である。
■事例②:(岐阜)
 住環境が劣悪である事例も多数報告されているが、岐阜において、金属加工の作業に従事していた中国人技能実習生の事例では、研修生、技能実習生らは、本来住居スペースとして想定されていない工場の中二階で、ベニア板で仕切っただけの小屋を造って生活をしていた。一階での金属加工作業による粉塵が舞い衛生状態が悪く、耐震性も全く整っていなかった。研修生に対しては、受入れ側が住居を提供することとなっているが、実際のところ住居を提供しているとは到底言えない例がある。

 法務省入国管理局により認定された受け入れ機関による「不正行為」を引用するだけでも、「人権侵害行為」は、70件にもおよび、法務省入国管理局が「看過できない状況」と指摘する事態が生じている。 研修生の旅券や預金通帳を取り上げ、携帯電話の所持を禁止し、夜9時以降の外出を禁止したり、遠出の外出を禁止するほか、部屋の施錠を忘れた場合や内履きで屋外に出た場合の罰金を定めた受入れ機関の存在など、入国管理局によって多数指摘されている。
 また、不十分なJITCOの平成19年度における巡回指導によっても、不適正なパスポートの管理が指導された企業は25存在する。また、JITCOには平成19年度に31件もの受け入れ機関による暴力やセクハラの相談も寄せられている(註6)。これらの現状を受け、昨年3月25日の閣議決定は、早急に講ずべき措置の一つとして、受入れ機関の適正化を図るため、「不正事案については入国管理局及び労働基準監督機関の間との綿密な連携の下に・・・積極的に実態調査または臨検監督を実施」することとした。
 政府は、かかる閣議決定に従い、早急に実施を具体化すべきである。

(4)在留資格の不安定性
 入国管理局では、研修・技能実習に関し不適正な行為を行った機関に対しては、「不正行為」の認定を行い、研修生の受入れを3年間停止する措置を講じているが、その際、不正行為認定を受けた機関で既に受け入れられており、在留期限が残っている研修生たちを保護する運用は何ら行われていない。すなわち、受入れ機関に不正行為認定がなされると、当該受入れ機関で研修中の在留期間内の研修生たちは、在留期間の更新が困難となるばかりでなく、在留継続の基盤を失う結果となり、言い換えれば、不正行為認定により研修生、技能実習生が不利益を被る結果となっている。
 これにより、研修生、技能実習生たちは、不正行為の通報ができなくなり、過酷な労働や人権侵害行為にも甘んじることになるのであり、受入れ機関の不正行為を抑制することができない。 2007年12月の規制改革会議第2次答申においても「受け入れ機関の不正行為に遭遇しながらも研修生・技能実習生はみずからが途中帰国させられることをおそれ、被害の実情を入国管理局・労働基準監督機関等に申告することを躊躇する傾向にあるため不正行為が減少しないとも指摘されている」と同様の指摘がなされている。
 この点に関しては、2008年3月25日の閣議決定においては、2008年措置として「受入れ機関が不正行為の認定を受けた場合及び受入れ機関の倒産等により研修・技能実習が継続できない場合」には「他の機関に受け入れられる場合には引き続き在留が認められる」ことを明確にし、「他の受入れ機関において研修・技能実習を継続できるよう受け入れ先機関の開拓を行う仕組みを構築」する旨の決定がなされているが、未だに具体化はしておらず、受入れ機関や研修生任せになっている。
 また、受入れ機関が気に入らない研修生、技能実習生について、予め管理している旅券を利用して航空券を手配し、強制的に帰国させるという事例も多数報告されている。
■事例:強制帰国(岐阜)
 岐阜県の金属加工工場において会社の指導が不十分であったためにボール盤の操作を誤り、手指を切断する怪我を負った技能実習生が、事故から約1か月後、協同組合と受入れ企業により強制的に空港へ連れて行かれ、予め技能実習生の貯金によって用意されていた航空券を渡され、上海まで見張り役2名をつけられて強制的に帰国させられた事例。この技能実習生は、空港へ連れて行かれる際、殴る蹴るの暴行を受け、また、持ち物検査を受けて、衣類以外はほとんど没収された状態で帰国を強いられた。

 このような事態は、根本的には、外国人研修生制度、技能実習生制度を入管法のみに依拠させ、研修生、技能実習生の在留資格を受入れ機関の存在に依存させているために生じるものである。

(5)送り出し機関の問題
 外国人研修生が、来日に先立ち、本国の送り出し機関との間で締結している契約内容についても多くの問題が存在する。送り出し機関とは、日本の第一次受入れ機関と契約を結び、研修生の送り出しを行う機関である。 研修生たちはそれぞれの母国の送り出し機関の人材募集に応じて集められ、この機関と契約を結び、多額の準備費用を負担させられ、送り出し機関との契約に違反した場合の違約金を担保する保証金、土地、家などの担保を取られることが多い。研修生たちは、この契約に基づく保証金の没収及び違約金の徴収を恐れ、日本において受入れ機関から人権侵害を受け、労働条件が法令違反であることがわかったとしても、権利主張をすることが極めて困難な状況に追い込まれている。
 送り出し機関との契約内容としては、日本の労働関係諸法令に違反する定めが置かれていることが通常である。さらに、受入れ機関の行ったことに関し、「日本の裁判所、社会団体、報道機関に訴えない」、「ストライキをしない」等といった条項を入れて権利行使を妨げ、これに違反した場合にも上記の違約金等を没収するという条項が入る場合がある。
■事例①:ベトナムの送り出し機関スレコ
 多くのベトナム人研修生を日本に送り出しているベトナムの国営企業スレコ(SULECO)においては、研修生を送り出すに際して契約を締結する際、すでに日本において受入れ機関から支払われるべき研修手当、賃金について、本法の労基法上許されない低賃金、時間外手当、強制貯金の定めを定型の書式において置いている。研修生に対して送り出すに先立ち約100万円の保証金を徴収し、家族の居住する不動産には抵当をつけ、来日後に受入れ機関をして毎月徴収した強制貯金は送り出し機関へ送金をさせ、仮に、研修生が送り出し機関の指示に従う内容で帰国できなかった場合には、保証金、強制貯金は全て没収するという内容の契約をしていることしている。
■事例②:上海送り出し機関
 2005年から岐阜市の縫製業の会社で研修・技能実習を行った中国人研修・技能実習生(女性名)の場合、送り出し機関と締結した「研修生待遇確認書」に、日本の最低賃金法に違反する、技能実習の日給を4800円(2年目)、5200円(3年目)、研修・技能実習の残業代時給を300円(1、2年目)、350円(3年目)とする規定があり、また、「承諾協議書」には、研修・技能実習生は「日本の裁判所、社会団体、報道機関に訴えない。」という規定があった。彼女たちは、技能実習の途中で、労働組合に加入して、最低賃金を下回る残業代の支払いを協同組合及び会社に要求して、その一部を支払わせ、2007年3月に帰国した。
 2007年4月16日、中国上海の送り出し機関が上海市崇明県人民法院へ、4名の元研修生及びその保証人に対して4つの損害賠償請求訴訟(各5万2000元)を提起した。同月25日、元研修生等、保証金返還請求(各2万元)は反訴を提起したが、同年10月12日、元研修生・1名およびその保証人の一審敗訴判決が出された。敗訴の根拠は、第1次受入れ機関名義の損害賠償請求書が証拠として提出されたことである(実は、これは偽造文書である)。同年10月頃、敗訴した元研修生および保証人は、上海市第二中級人民法院へ控訴。同年12月17日、控訴棄却判決が出され、確定した(中国の裁判は、二審制)。同年12月20日、他の3名の元研修生及びその保証人の一審敗訴判決が出されている。2008年9月、送り出し機関は、上記確定判決に基づき強制執行をかけてきた。元研修生らは、同年11月に再審を申し立て、現在、係争中。


4 抜本的法改正ないし立法の必要性
 上記の問題点を改善するためには、第一に、緊急の施策として、研修生の実務研修について、労働関係諸法令の適用を定めることが必要である(意見書趣旨1)。
 しかしながら、かかる改正が制度の抜本的見直しに繋がる訳ではない。外国人研修生制度は、前述したとおり、「開発途上にある国々に対して技術・技能を移転させることを目的として、我が国に研修生を招いて技術移転による人材育成を行い、それらの国々の発展を支援するという長く広くその効果が浸透していく国際協力・国際貢献」(法務省入国管理局)とされながら、実態としては、上記の通り、研修生が「研修」とは認めがたい「労働」に従事させられており、制度趣旨との乖離が甚だしいからである。
 すなわち、日本政府は、表向きには外国人に対して単純労働のための在留資格を認めていないにも拘わらず、多くの研修生・実習生は「きわめて安価な労働力」として、また転職のできない「管理された労働力」として働かされ、過酷な就労・生活環境の下で人権侵害が頻発し、「現代の奴隷」と批判される事態が生じており、なかには、悪質なブローカーや受入れ機関に管理費等のピンハネを受け、実質的に人身売買と指摘せざるを得ない事例すら存在するのである。
 そのことは、近時、国際的にも認知されるに至っており、2008年10月、国連自由権規約委員会は、外国人研修生問題に関して、日本国政府に対し、「法定最低賃金や社会保障をはじめとする最低労働基準に関する国内法による保護を外国人研修生および技能実習生に適用し、研修生と技能実習生を搾取した雇用主に対して適性な制裁措置を科すべきである。また締約国(日本国)は、現行の制度を、研修生及び技能実習生の権利が十分に保護される新たな枠組みに発展させ、低賃金労働者としての募集よりも、能力開発に焦点をあてることを検討すべきである」との勧告をなした。
 外国人研修生、技能実習生制度を維持するとしても、以下の点を見直すべきであり、かかる見直しを定めない小手先の法改正では、不十分と言わざるを得ない。以下、意見書の趣旨2ないし4について補足する。

(1)意見書趣旨2について
 2003年から2007年の5年間に「不正行為」と認定された1160件のうち1128件は団体監理型である。
 研修生・技能実習生の受入れには、企業単独型と団体監理型がある。企業単独型は、日本の企業が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を直接受け入れるものである。これに対して、団体監理型は、事業協同組合等の中小企業団体、商工会議所、商工会等が受入れ団体(第一次受入れ機関)となって研修生・実習生を受入れ、傘下の中小企業(=受入れ企業、第二次受入れ機関)において実務研修及び技能実習を実施するものである。
 団体監理型では、従業員十名から数十名程度の中小企業も研修生・技能実習生の受入れが可能となるため、十分な受入れ体制の整わない受入れ機関も少なくない。
 経済産業省も「こうした不正行為を行っている受け入れ企業では、研修・技能実習生に対する十分な技能教育や生活支援なども行われていないケースが多いと言われておりまさに制度趣旨に反する受け入れ実態となっている」(註7)と指摘しているところである。本来の制度趣旨に沿った制度運営を目指すのであれば、第一に、団体監理型を廃止すべきである。
(2)意見書趣旨3について
 上記に述べたとおり、研修生は、来日に先立ち、本国送り出し機関との間で、多額の保証金を納め、その没収、研修中の管理費の徴収、違反行為があった場合の賠償金の予約など、本邦においては、法令違反となる内容の契約を締結していることが大半である。日本政府は、本邦における外国人研修生、技能実習生制度がかかる弊害を本国で生み出していることを真摯に受け止め、実態調査に乗り出すと共に、このような日本の法令違反の契約を行う送り出し機関からの研修生受け入れを、法令で明確に禁止しなければならない。
(3)意見書趣旨4について
 技能実習制度は、労働でありながら、他業種への転職を認められていないという特殊性があり、その結果、技能実習生の在留継続を受入れ機関に依存させることとなり、受入れ機関に対する正当な権利主張を妨げ、受け入れ機関や送り出し機関による人権侵害を誘発している。
 そこで、研修生、技能実習生が在留期間中に研修、技能実習を受ける機会を保障し、その期間内は、他の労働者同様、他企業、指定された範囲内での職種への移転を認める必要がある。


以上


補足情報
註1: 厚生労働省 2008年6月 研修・技能実習制度研究会報告(以下研究会報告という)2頁
註2: 2006年8月 JITCO業務統計
註3: 研究会報告5頁
註4: 入国管理局 2007年12月研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針
註5: 入国管理局 2006年度の不正行為認定について
註6: JITCO 2005年受け入れ実態調査
註7: 経済産業省 平成19年5月14日 「外国人研修・技能実習制度に関する研究会」取りまとめ

by benren | 2009-02-09 00:00 | 研弁連の取り組み